窯の魅力

窯の魅力

常滑には、新しいものから古いものまでさまざまな窯があります。

現在も活躍するトンネル窯から、明治時代につくられた登窯、平安時代末期の古窯跡まで、それぞれの特徴や共通点に注目しながら窯の変遷をたどってみましょう。

現在活躍中の窯

「ガス窯」

現代の陶芸窯を見学する際に、まず注目したいのが、ガスか電気かといった熱源の違い。排気口が煙突へと伸びていれば、ガス窯であることが分かります。
窯の脇にはガスバーナーがついており、ガスと空気を供給しながら温度を上昇させます。目指す温度は、釉薬が溶ける1250℃。窯の環境は季節や風などにより変化するため、状況に応じた温度管理が欠かせません。

炎の揺らぎから生まれる
「窯変」がおもしろい!

「ガス窯」

とこなめ陶の森 研修工房

現代の陶芸窯を見学する際に、まず注目したいのが、ガスか電気かといった熱源の違い。排気口が煙突へと伸びていれば、ガス窯であることが分かります。
窯の脇にはガスバーナーがついており、ガスと空気を供給しながら温度を上昇させます。目指す温度は、釉薬が溶ける1250℃。窯の環境は季節や風などにより変化するため、状況に応じた温度管理が欠かせません。

  • 「ガス窯」
  • 「ガス窯」
「ガス窯」

酸素が十分にある状態で焼くことを「酸化焼成」、反対に酸素が足りない状態で焼くことを「還元焼成」とよび、その状態によって土の素地や釉薬の色合いが変化します。また、ガスの炎が当たる、当たらないで器に表情が生まれるため、焼成の際に窯のどこに置くかという窯詰めも重要。不確定要素が多いからこそ、予期せぬ景色や風合いが生まれる「窯変」が起きやすく、ガス窯のおもしろさと言えます。

「電気窯」

電気を熱源とした窯で、ガス窯との違いはなんといっても手軽さと安定感。何時間かけて何度まで温度を上げるか、といったことがすべてプログラムでき、スイッチひとつで焼き上げることが可能です。操作が容易で扱いやすいことから、小型の家庭用タイプも販売されています。

急須などに重宝される、
ムラの少ない均一な仕上がり

「電気窯」

とこなめ陶の森 研修工房

電気を熱源とした窯で、ガス窯との違いはなんといっても手軽さと安定感。何時間かけて何度まで温度を上げるか、といったことがすべてプログラムでき、スイッチひとつで焼き上げることが可能です。操作が容易で扱いやすいことから、小型の家庭用タイプも販売されています。

  • 「電気窯」
  • 「電気窯」
「電気窯」

窯の内側を見ると、無数の電熱線が張り巡らされているのがお分かりでしょうか。電力で熱量を高める焼成は、ガス窯のように空気を必要としないため、ムラが少なく仕上がるのが特徴。均一性の求められる急須などによく使われます。
ならば、電気窯でおもしろさを出すことは難しいかと言えば、決してそんなことはありません。とこなめ陶の森研修工房にある電気窯には、ガスバーナーを差し込むための挿入口が設けられています。ガスを流入することで、中の酸素が使われて「還元焼成」の状態になり、窯変を生み出すことができます。

「薪窯」

木材を燃やして焼成する、昔ながらの窯。一般的に、ガス窯や電気窯では熱で釉薬を溶かし、土を焼き締めるのに対し、薪窯では釉薬をかけなくても、自然の釉がかかります。
薪窯は窯詰めだけで約1週間、火入れでは三昼夜かけて薪を焚き続けます。とこなめ陶の森研修工房にある写真の薪窯では、薪としてスギ材を使用しており、1回の焼成で使用するのはなんと600束! ガス窯や電気窯に比べて、かなりの労力と燃料を要するため、薪窯は年に1回使用しています。

焚き続けること三昼夜。
炎と灰の野趣あふれる表情が魅力

「薪窯」

とこなめ陶の森 研修工房

木材を燃やして焼成する、昔ながらの窯。一般的に、ガス窯や電気窯では熱で釉薬を溶かし、土を焼き締めるのに対し、薪窯では釉薬をかけなくても、自然の釉がかかります。
薪窯は窯詰めだけで約1週間、火入れでは三昼夜かけて薪を焚き続けます。とこなめ陶の森研修工房にある写真の薪窯では、薪としてスギ材を使用しており、1回の焼成で使用するのはなんと600束! ガス窯や電気窯に比べて、かなりの労力と燃料を要するため、薪窯は年に1回使用しています。

  • 「薪窯」
  • 「薪窯」
「薪窯」

窯の中へ入ると、奥に向かって床が階段状に高くなっているのが分かります。上へ上へとのぼる炎の性質を利用したもので、入り口で薪を燃やし、奥の煙突に向かって炎が流れる構造。炎に乗って、灰が作品に降りかかることで、作り手の思惑を超えた野趣あふれる表情が生まれます。

「トンネル窯」

中部国際空港をはじめとした国内外の空港や、高速道路のトンネル、港、発電所、そして、街のさまざまな場所に、地中にケーブルを埋設する際の保護管として、常滑のやきものが使われているのをご存じでしょうか。多孔陶管(セラダクト)と呼ばれ、高い強度に加え、火災や、塩水による錆にも強い。世界で唯一ともうたわれる画期的な製品です。これを焼き上げているのが、武豊町セラミックスの老舗・杉江製陶のトンネル窯。現在使用している窯は、1983年より、メンテナンスしながら大切に使い続けられてきました。

多孔陶管の世界的メーカーを支える、
長さ120mの巨大窯

「トンネル窯」

杉江製陶株式会社

中部国際空港をはじめとした国内外の空港や、高速道路のトンネル、港、発電所、そして、街のさまざまな場所に、地中にケーブルを埋設する際の保護管として、常滑のやきものが使われているのをご存じでしょうか。多孔陶管(セラダクト)と呼ばれ、高い強度に加え、火災や、塩水による錆にも強い。世界で唯一ともうたわれる画期的な製品です。これを焼き上げているのが、武豊町セラミックスの老舗・杉江製陶のトンネル窯。現在使用している窯は、1983年より、メンテナンスしながら大切に使い続けられてきました。

  • 「トンネル窯」
  • 「トンネル窯」
「トンネル窯」

杉江製陶のトンネル窯は長さ120mあり、全国的にみても大きなサイズ。1個約60センチの製品を、一日に最大約40トン焼成できる能力があります。当初の燃料は重油や軽油でしたが、環境への配慮から現在は都市ガスに。窯の温度は最高1200℃ほどになり、製品をゆっくり冷やすために時間がいります。そのため、製品が窯から出てくるまでには1週間ほどかかります。
※見学は通常行っていません

昔使われていた窯

「登窯」(1887年頃~1974年)

常滑やきもの散歩道にある登窯広場では、明治20年頃につくられた登窯(陶榮窯)を見ることができます。焼成室が8室連なった連房式登窯で、階段状につながる構造により、効率よく高温で焼成できます。当初は薪のみで焚いていましたが、途中、第一室を石炭、第2室以降を薪や松葉で焼成する、折衷式に改良されました。すべてを焚き終わるまでには11日ほどかかったそうです。
この「陶榮窯」は共同オーナー制で、主に焼かれたのは急須や盆栽鉢などの真焼物(まやけもの)。昭和49年まで活躍しました。日本でも最大級の登窯で、国指定重要有形民俗文化財に認定されています。かつては常滑市内に60基以上あった登窯も、今では現存する唯一のものとなりました。

日本最大級の登窯と10本の煙突は、
常滑のシンボル!

「登窯」(1887年頃~1974年)

常滑市登窯広場 陶榮窯

常滑やきもの散歩道にある登窯広場では、明治20年頃につくられた登窯(陶榮窯)を見ることができます。焼成室が8室連なった連房式登窯で、階段状につながる構造により、効率よく高温で焼成できます。当初は薪のみで焚いていましたが、途中、第一室を石炭、第2室以降を薪や松葉で焼成する、折衷式に改良されました。すべてを焚き終わるまでには11日ほどかかったそうです。
この「陶榮窯」は共同オーナー制で、主に焼かれたのは急須や盆栽鉢などの真焼物(まやけもの)。昭和49年まで活躍しました。日本でも最大級の登窯で、国指定重要有形民俗文化財に認定されています。かつては常滑市内に60基以上あった登窯も、今では現存する唯一のものとなりました。

  • 「登窯」(1887年頃~1974年)
  • 「登窯」(1887年頃~1974年)
「登窯」(1887年頃~1974年)

登窯の周囲をぐるりと回ると、レンガ造りの10本の煙突が現れます。よく見ると端っこの煙突が高くなっています。炎が高いところへ引っ張られる習性を利用することで、均一に焼き上がるよう工夫した様子が見て取れます。

「両面焚倒焔式角窯」(1921年~1980年)

登窯広場の展示工房館では、大正時代以降に流行した「両面焚倒焔式角窯(りょうめんだきとうえんしきかくがま)」が展示されています。効率よく窯詰めするために正面に設けられた、2つの入り口が特徴的です。戦前には、知多半島で盛んに製造された焼酎や酢、みりんを入れるための瓶が焼かれていました。内部の壁面には、焼酎瓶の肩が当たったと思われる跡が残り、窯いっぱいに詰めたことが想像できます。

2つの入り口に火屏風、
窯を囲む鉄道レールも見どころ

「両面焚倒焔式角窯」(1921年~1980年)

常滑市登窯広場 展示工房館

登窯広場の展示工房館では、大正時代以降に流行した「両面焚倒焔式角窯(りょうめんだきとうえんしきかくがま)」が展示されています。効率よく窯詰めするために正面に設けられた、2つの入り口が特徴的です。戦前には、知多半島で盛んに製造された焼酎や酢、みりんを入れるための瓶が焼かれていました。内部の壁面には、焼酎瓶の肩が当たったと思われる跡が残り、窯いっぱいに詰めたことが想像できます。

  • 「両面焚倒焔式角窯」(1921年~1980年)
  • 「両面焚倒焔式角窯」(1921年~1980年)
「両面焚倒焔式角窯」(1921年~1980年)

中に入ると、両脇に火屏風を見ることができます。両側の焚き口から入った炎が火屏風を超えて吹き上がり、天井でぶつかって下方へ吸い込まれ、床下の煙道から煙突へ抜けていく仕組みです。展示の都合上、窯の奥行きは本来より短くなっていますが、もとは左右に4か所ずつ焚き口があり、燃料は石炭や重油が使われました。
なお、レンガ造りの窯を囲むように立つ黒い柱のようなものは、鉄道の古いレールを活用したもの。熱で膨張しないよう窯をしめる役割があります。

「窖窯」(籠池古窯 第三号1135~1150年頃、第九号1220~1250年頃)

「籠池古窯」は、愛知用水を整備する際に発見された古窯址。斜面にトンネルを掘った「窖窯」と呼ばれる構造を持ち、手前から焚き口、燃焼室、分焔柱、焼成室があり、煙出しを経て再び地上につながります。中世古窯の形態を伝える貴重な遺跡として、県史跡に指定されています。
こちらで特に興味深いのが、年代の異なる2基の古窯が並んでいる点。両者を比較すると、年代の古い三号窯(写真左)では、最大30~40度と傾斜がきつく、九号窯(右)では幅広で傾斜が緩め。三号窯は、手前の焼成室が緩やかな所で甕を、急角度の所で茶碗を窯詰めしたと考えられています。九号窯は燃焼室全体が緩やかとなっており、甕だけを焼く専用の窯として利用されました。燃焼効率などを考慮し試行錯誤したであろう、先人たちの工夫が見て取れます。

年代の異なる2基が並ぶ、
斜面を生かしたトンネル状の古窯址

「窖窯」

(籠池古窯 第三号1135~1150年頃、第九号1220~1250年頃)

常滑市久米籠池

「籠池古窯」は、愛知用水を整備する際に発見された古窯址。斜面にトンネルを掘った「窖窯」と呼ばれる構造を持ち、手前から焚き口、燃焼室、分焔柱、焼成室があり、煙出しを経て再び地上につながります。中世古窯の形態を伝える貴重な遺跡として、県史跡に指定されています。
こちらで特に興味深いのが、年代の異なる2基の古窯が並んでいる点。両者を比較すると、年代の古い三号窯(写真左)では、最大30~40度と傾斜がきつく、九号窯(右)では幅広で傾斜が緩め。三号窯は、手前の焼成室が緩やかな所で甕を、急角度の所で茶碗を窯詰めしたと考えられています。九号窯は燃焼室全体が緩やかとなっており、甕だけを焼く専用の窯として利用されました。燃焼効率などを考慮し試行錯誤したであろう、先人たちの工夫が見て取れます。

  • 「窖窯」(籠池古窯 第三号1135~1150年頃、第九号1220~1250年頃)
  • 「窖窯」(籠池古窯 第三号1135~1150年頃、第九号1220~1250年頃)
「窖窯」(籠池古窯 第三号1135~1150年頃、第九号1220~1250年頃)

三号窯の分焔柱の右側にある出入口の幅は約80cm。陶工たちはここから大きな甕を出し入れしていたと考えられます。では、焼成中はトンネルの入り口をどのように閉じていたのでしょうか。実はまだよく分かっていないのです。もし、あなたが中世の窯焼き職人だったら……ぜひ想像してみてください。
※窯跡はいつでも見学できますが、窯の中に入る場合は許可が必要です

常滑市周辺で窯めぐりを楽しもう!

常滑市を中心とした知多半島には、ほかにもたくさんの窯が残されています。「とこなめ陶の森」でも、不定期で見学ツアーなどを開催しています。やきものだけでなく、ぜひ窯にも注目して巡ってみてください。

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